データ活用を始める前に知っておきたい!データクレンジングと名寄せでマーケティング効果を最大化
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今回は、顧客データをどのように統一するか迷っているマーケティング担当者や、MA(Marketing Automation)に興味を持っているマーケティング担当者の方に、「データクレンジング」と「名寄せ」の重要性について解説していきます。
顧客データの扱いにお困りの方は、今回の内容を参考にしてみてください。
「データクレンジング」と「名寄せ」とは?
近年、顧客データのデジタル化など、BtoBマーケティングでもデータマネジメントが注目されています。
顧客データを整理するためには事前に「データクレンジング」や「名寄せ」が必要になりますが、詳しい解説に入る前にそれぞれの作業の違いと役割を押さえておきましょう。
■データクレンジング
データクレンジングとはデータベースやExcel、CSVファイル内で入力規則が異なるデータを修正・削除・置換する作業。
例えば、半角・全角混在のデータを全角に揃えたり、余分な空白を削除したり、表記をルールに沿って統一します。この作業によってデータがシステムに適した形に整えられ、正確性が高まります。
■名寄せ
名寄せとはデータクレンジングの後に、そのデータ内に存在する同一人物を1つにしてまとめる作業。
この作業によって、顧客情報の中から重複するもの、複数のデータベースなどに分散されていたものが統合されます。
なぜ「データクレンジング」と「名寄せ」が重要なのか?
コロナ禍を経て、多くの企業がデジタル化を加速し、データ活用を本格化しています。すでにデータを統一化し、データ活用に取り組んでいる企業は、データドリブンマーケティングで結果を出しています。
顧客データは、企業のマーケティング戦略にダイレクトに関わるデータでもあります。データクレンジングや名寄せに着手していない企業は早々に取り組み、新たな戦略に繋げていく必要があります。
しかし、実際、企業内にあるデータは、さまざまなチャネルで独立して存在していたり、別々の営業担当者が同じ人から名刺をもらい、統一されていないフォーマットに登録していたり、営業担当者だけしか分からない場所に保管している……ということもあるのではないでしょうか。
そこに、日本語で使われる文字の種類(ひらがな、カタカナ、英語、数字など)が多いことや、さらに「株式会社」であれば、「株式会社」以外にも、「(株)」、「Co., Ltd.」など、表記が複数あるという日本語独特の特殊性を考えれば、データがばらついてしまうことは予想できるのではないでしょうか。
こういった状況の中で個々が独立したデータになっており、繋がっていない、統一化されていないデータに困っている企業は多く、データの活用の前段階で止まっていると考えられます。
データの品質が低いと起こる可能性のある問題
とはいえ、一部の営業担当者は「とりあえず登録すれば良いだろう」と思い込んでしまうこともあるかもしれません。
しかし、それは誤りです。データ活用の前段階においてデータクレンジングや名寄せがしっかりできていなければ、マーケティング戦略に問題が出てきます。
実際にどのような問題が起きるのかをピックアップしてみました。
■正確な顧客分析ができない
データクレンジングや名寄せをしていないと、同一人物であるにも関わらず、役職や部署が変わった、企業名の表記が若干異なったというだけで別の人物とみなし、重複データを登録してしまう可能性があります。
それによって、顧客に10,000件メールを送った中で、実は3,000件が重複していた……と仮定した場合。700件のクリックが発生したら、7%の反応があったと判断しますが、ユニークユーザーは7,000件なので、本来は10%が正しい数値です。
重複を解消しない限り、正確な分析ができないままになってしまいます。
■ツールが活用できない
元となるデータが正確でなければMA(マーケティングオートメーション)のようなツールに高度な機能があったとしても、意味がありません。
特にMAの情報からリードナーチャリングやリードクオリフィケーションを経てホットリードを選別していきますので、データクレンジングや名寄せができていないと正確なスコア付けができなくなります。
例えば、2回セミナーに参加したAさんのデータが1回ずつ別のデータとして登録されていた場合、セミナー参加回数は1回とみなされ、スコアは合算されず低いままになり、見込み客リストが不確かなものになってしまいます。CRM(顧客情報管理システム)やSFA(営業支援システム)も同様です。
同じ見込み客にさまざまな営業担当者からアプローチをしてしまったり、見込み客の温度感を考慮せずにアプローチしてしまうかもしれません。
データが大量になればなるほど、結果に与える影響が大きくなります。
■企業やブランドの信用力の低下
BtoBマーケティングは、特に購入の意思決定をする役割がある経営層や中間管理職層とのやり取りには細心の注意を払ったアプローチをしなくてはなりません。
しかし、同一人物の重複したデータがMA等のツールにそのまま登録されていると、メールや送付物を複数送ってしまう恐れもあります。
さらに、複数の営業担当者からの(意図していない)しつこいアプローチも含め、こういったことが数回続けば「顧客管理が上手くできていない」、企業によっては「セキュリティ管理も甘いのでは?」という風に受け取られ、関心度の高かった顧客まで逃してしまうことも有り得ます。
結果として、取引の停止、企業やブランドの信用・評価を下げてしまうことに繋がります。
■無駄なコストの発生
システム使用料がデータ数で増えていく従量課金制のツールをお使いの場合には注意が必要です。重複データがあることで余分にコストが掛かっているというケースがあるかもしれません。
さらに、重複データに気付かないままでは、定期的なカタログやキャンペーンDMの送付時の発送コストも無駄に掛かり続けてしまいます。
「データクレンジング」と「名寄せ」の方法
データが統一化されていないことで想像以上に大きな問題につながる恐れがあることがご理解いただけたと思います。
見込み客や顧客からの評価が低くなってしまったり、営業機会の損失にならないよう、データクレンジングや名寄せに着手していきましょう。
実際の「データクレンジング」と「名寄せ」に必要な作業の手順とともに、データマネジメントを正しく実施していくためのポイントも併せて説明していきます。
■1.事前作業(データ項目の策定)
データクレンジングと名寄せを行う前に、どのような項目でデータを構成するかを決めておきましょう。最低限必要となる項目には、以下のようなものが考えられます。
・社名
・従業員数
・資本金
・業界
・部署名
・役職
・氏名
・ふりがな
・性別
・住所
・電話番号
・携帯電話番号
・メールアドレス
その他、Webサイトの行動履歴や、予算、決裁権など、自社で必要となりそうな情報を考慮しながら項目を追加してみましょう。
■2.データクレンジング
次に、データクレンジングをするための表記ルールを決め、それに沿ってデータの項目を整えていきます。ここでやることは、データの住所や表記の「ゆらぎ」の整理です。
日本語の表記には多くの表現がありますので、全部を挙げようとするときりがありませんが、データクレンジングのルールとして最低限、以下の情報は整理した方が良いでしょう。
・数字の全角/半角
・アルファベットの全角/半角
・地名の表記を統一する基準(龍ヶ崎→竜ヶ崎 など)
・住所の番地の表記ゆれの統一(三丁目2番1号、3丁目2番地1号、3-2-1 など)
・電話番号や郵便番号のハイフンの扱い(ハイフン区切り、ハイフンなし など)
・法人格の表記の正規化
・社名の正規化(キャノン→キヤノン、日本電気→NEC など)
ルールに沿ってデータを統一していくと、重複していたデータをあぶり出すことができます。不要なデータ、重複しているデータは、このタイミングで削除しましょう。
■3.名寄せ
データを一意に識別する「キー」となる項目を決めて、名寄せをしていきます。重複しない唯一の項目であるメールアドレスをキーとするのが良い選択肢です。
氏名は同姓同名が発生しますし、生年月日なども重複する可能性はあります。
※件数が多い場合には?
データクレンジングや名寄せの作業はExcelの機能で作成することも可能かもしれませんが、顧客データが1,000件以上となってくると、手作業で実施するのは現実的ではありません。
また、データは定期的に整備し、定義したルールで正規化された状態にしておく必要もあります。
データクレンジングと名寄せを同時に行うサービスを提供している企業もありますので、高精度な名寄せができる専用ツールを利用するのが一般的です。
まとめ
データクレンジングと名寄せの重要性を理解していただけたことでしょう。これらの作業は、顧客満足度を上げるために必要なものです。大量の顧客データの重複や不整合などにお悩みの方は、今回の内容を参考にデータをチェックしてみてください。
〈今回の記事のポイント〉
・データクレンジングと名寄せは、データ活用をする前の準備作業。活用できるデータにするためにも、データの品質を高める必要がある。
・データの品質が悪ければその後の分析や営業の元データとして役立たないだけでなく、企業の信用や無駄なコスト発生にも関わる。
・顧客データが大量の場合は、名寄せツールなどで効率よくデータクレンジングと名寄せを行う。
今、多くの企業がデジタル化を進めつつ、よりデータを活用するためにMA等のツール導入を検討しています。マーケティング戦略を効率化するためにも、顧客データの整備に取り組んでみてはいかがでしょうか。